01
梟、翡翠、草花——。私が描くのは、一瞬の静けさの中に潜む生命の力です。
羽毛の一本一本、花弁の微細な揺れ。そうした細部に宿る気配を、岩絵具と金の光で閉じ込めること。
それが私にとっての日本画であり、自然との対話でもあります。
02
日本画に用いる「岩絵具」は、天然鉱物を砕いて作られた顔料です。
粒子の大きさによって異なる質感と輝きを持ち、重ねるたびに深みを増します。
「金箔」「金泥」は光を宿す素材。絵の中に時間の流れを感じさせ、
見る角度や光の当たり方によって表情が変わります。
これらの素材は数百年前から変わらず使われてきたもの。
その伝統の手触りの中に、現代の感性を込めることを目指しています。
03
作品の土台となる「麻紙」は、麻繊維を原料とした和紙の一種です。
丈夫で岩絵具の発色に優れ、何層にも色を重ねることができます。
紙の表面の凹凸が、絵具の溜まり方に微妙な変化をもたらす。
素材との対話の中に、予期せぬ偶然の美が生まれることもあります。
04
東京芸術大学大学院では「文化財保存修復」を専攻しました。
古典作品の修復を通じて、先人たちの技と精神に直接触れたことは、
制作者としての私の根幹を形成しています。
傷んだ絵画を「蘇らせる」仕事は、素材の声を聴く訓練でもありました。
その経験が今も、新作を描く際の指針となっています。
05
日本画には「余白を描く」という考え方があります。
描かれていない空間もまた、作品の一部です。
何も置かれていない場所に、静けさや空気が宿る。
その余白の豊かさを、現代の感覚で再解釈することが、
今の私の大切な関心のひとつです。
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